#05 佐藤 将一さん 障がい福祉系NPO法人ディレクター(後編)

就労移行支援事業所の管理者をしながら、制度外で障害者の住宅支援、大人の引きこもり支援、最近では婚活支援やオンラインサロンの運営をしている佐藤さん。

支援者であれば誰でも「できたらいいな」と考えるソーシャルアクションをどんどん実現されています。今回は大手福祉系企業から、地域のNPOに転職され・・?いよいよソーシャルアクションが始まります!

就職して、社会に出てもそこで終わりな気が全然しなかった

ほんとに経営のけの字も知らないところなので、支援が好きな人が想いだけで立ち上げたところなので、僕は僕の持っているものを提供しやすいし活かしやすいと思ったんです。

就労移行の管理者として入って、立ち上げて間もなく利用者も数少なくて、就労に出たひともまだいない。就労支援のスタイルもまだ確立しきってなかったので、まっさらなところから入りました。

転職して5年半になりますが、最初3年くらいは就労移行として、利用者さんがうちに来て社会に出ていくことができる流れを作っていかないと事業所としてそもそも成立しないことになるから、そこを一生懸命やってました。

ーそこから今の新しい形になっていったんですね。

結局、元々、一般的に就労移行ではないかもしれない方や、家庭の課題がある利用者の方がよく来ていて、若い方も多く、3年間事業所の形作りする中で、その人たちが就職して社会に出てもそこで終わりな気が全然しなかったんです。

何かあったら連絡が来て相談にもなるし、お金貯めて一人暮らししたいというニーズがあればケア会議をしたりしています。

そもそも、就職をすることが難しいひとはほとんどいないんですよね。

でもなぜ就職今できてないんだっけ?と考えると、家庭の問題があって生活がガタついているとか、生育歴の中で対人関係がうまくいかなくて自己肯定感を醸成していくプロセスを踏めていないとか、ほとんどの方がそうなんですよね。

こういう課題がある人が多いのであれば、いわゆる就労移行の立て付けだけでやっていっても違うんだろうなと思い始めました。就労支援はあんまりしてないんですよね、そういう意味では(笑)

例えば、就職した利用者さん同士が結婚したいって言われていたんですね。これは同棲までの貯金計画を立てて、電気屋やニトリにいって、何がいるのか、これだけのものは買わないといけない、というサポートして、無事に結婚した、ということがありました。

その時、社会に出た後もライフステージはどんどん進んでいくけど、そのサポートって何だっけ?と考えた時に、なかったんです。家事ができなかったらヘルパーくらいはあるけど、利用者さんも色々なサービスは使いたがらないんですよ。知らない人に家に入ってほしくないって。そりゃそうですよね。

役所に行って一から説明したら、ここはあっちの課ですと言われてまた最初から説明してってすごく嫌な感じがするじゃないですか。

何でもかんでも一本化する必要はないけど、嫌だったら自分でなんとかしてくださいね、というのは違うよなと思って最初に手をつけたのが「住むところ」のサポートでした。

家をこっちで用意して、必要なサポートをする代わりに、就労から得たお金の一部をいただきますという仕組みを作りました

もちろん他のグループホームと比較して選ぶのは本人の自由です。

施設運営だけではなくて町の中に障害者も子どももみんな自然にいるっていう景色を作りたいなと思いました。

また、たまたますぐ近くで子ども食堂をやっている友達がいて、利用者さんを連れてボランティアで行くようになりました。すると、そこで重度の身体の方が動くと、小学校低学年くらいの子がすっと手伝ったり、高学年の子が見守ったりという自然な光景があるんですね、

特別な配慮があるわけではなく、みんなでご飯つくって食べて、無理やり仲良くなくなるわけではないけど自然とその場にみんないる。自分たちがいたのがちょうどシャッター街の商店街で、商店街ごとそういう景色にすることができたらいいな。町、コミュニティを作ればいいんだと思い立ちました。

一人ではできないから、自分は誰にも知られていないから、自分自身が知られて仲間を作らないといけないと思って、SNSでの発信を始めました。

福祉の価値を発信していく

デイサービスで価値を知ってもらってはじめて利用者さんを紹介してもらうのと同じように、まず知ってもらわないと始めらないなと。

福祉で食べていくためには経営は必要だけど、利用者がいないと経営が回らないというのはただ国からお金もらってるだけじゃないですか。

どうやって自分がやっている価値を広げていって、それをマネタイズしていくかというのはずっと考えていました。勉強のために自分がオンラインサロンに入って学んだり人脈を増やしたりして、自分でもいつかオンラインサロンをやろうと思っていました。

noteやtwitterをやり始めて、繋がった人のご縁でかかわらせてもらいに行ったりしたら、同じ地域でもつながりができてきて、入ってくる情報も増えて、障害者の保護者の支援をしている事業やフリースクールの事業に関わるようになってきています。

基本的には制度事業はしたくないんです。支援でお金もらってるのか書類でお金もらってるのか分からないし(笑)利用者さんが来てなんぼ、工賃出してなんぼという判断軸が福祉の経営としてそもそもずれてきているなと思うので。

色んな法人が色んな理念を掲げているけどどこも制度事業。

制度事業を上手く折り込みながらも自分たちの価値を打ち出しているところもありますけど、すごい理念でも中身は制度事業のところがほとんどですよね。

うちのサービスを使ったときに、人生をこう進めることができるよ、そのインフラはこんなものがあるよ、というのを見えるものじゃないとなと思っています。

例えば親御さんは親亡き後のことをすごく心配されています。就労や結婚の話が出るけど、結婚どころか恋愛したこともない利用者の方ってすごく多いですよね。

異性的なことから切り離されていたら、一生その選択肢を選ぶことができないんだと思って嫌だなと思って友人のウエディングプランナーしてた結婚相談所の人に相談したら「おもしろそう!」ってなって婚活支援も始めました。

社会に出た後のライフステージは、あらゆることにインフラがないんです。障害のある方が使える旅行代理店や飲み屋とかあってもいいし、それがおのずと町になっていく。

そんなことをしていると、就労の手前の人たちもまた気になってきて(笑)十何年引きこもりしていた、という人は就労移行2年じゃ足りなかったりするんですよね。そこで、引きこもりの方を受け入れをする「家」を作ろうと思いました。ひきこもりの方を受け入れて、地域の方が集ったり、一人暮らしの練習ができる家という場所をを始めました。

ちょっと大きい家だったら、生活訓練のサービスに制度外のサービスも付けられるなと思って、障害福祉サービスの対象になっていない方のフリースクールをつくりました。制度事業と抱き合わせだと、そんなに高い料金じゃなくてもやっていけるんです。

これが地域の中の福祉の価値軸になっていかないといけないと思います。

他の支援者の人とも、法人同士で話すと色々な制限があるけど、個人とつながったときは面白くて!

そこに所属しているいち支援者としての想いはすごく面白いですよね。このコミュニケーションは価値があるだろうなと思って、支援者のコミュニケーションのプラットフォームを作れないかなと思います。

動画で対談をしているとかラジオやnoteのテキストを置いておいたりすると、利用者や働きたい人も情報を得られます。見学をしないと何も分からないって、今の時代におかしくないですか?

そういうプラットフォームがひとつあったら誰にとっても得だし、福祉の人の発信だけでできているプラットフォームを作りたいなと思います。

まずは、自分が音声とかライブ配信したり自分がメディアになってそればどれくらい反応があるかな?というのを作りながら確かめながらやっています。