#04 TYさん 就労移行支援 支援員

新卒から製造業で働き、自身が発達障害の診断を受けたことで福祉業界へ転職したTYさん。今は就労移行支援で支援員として働いています。

積極的にこれまでの経験を利用者の方にも開示することでご自身も楽しく、またやりがいを感じながら働いているそうです。今後精神保健福祉士の資格取得を目指して通信課程で学ぶ予定で、ソーシャルワーカーの卵でもあります。

そんなTYさんのこれまでとは?

ー今、就労移行支援で働き始めて1年2か月ほどになるんですね。支援の仕事はとても楽しいとのことですが、今回はTYさんご自身の発達障害が分かったころのことからお伺いしたいです。

発達障害の診断は、新卒で働き始めて1社目の製造業で仕事をしている時に分かりました。実は妻から、「もしかしたら発達障害じゃないの?病院に行ってみよう」と言われたんです。

確かに、なくしものや忘れ物が多くて、部屋の片付けもできないところがあったのですが、その時は発達障害、ADHDという言葉も知らなかったので、驚いて一度は拒否したんです。

でも、また半年以上たった時に妻から再度声をかけられて、その時は自分でもインターネットなどで調べて少し理解をしていました。それで初めて医療機関を受診したんです。初めて受診したときは、「小さい頃はどうでした?」など質問が多すぎてすごく混乱しました。インテークですよね、そんな知識もないので驚きました。

その後、同じ製造業の企業に転職したんですが、その時はまだ手帳も持っていなかったのでクローズで転職したんです。ただ、なかなかうまくいかず一度休職しました。その休みの期間に障害者手帳を取得して、障害をオープンにして障害者雇用で復帰しました。

その時の上司に相談ができて、自分の得意なことを担当する業務にしてもらったり、必要な配慮を受けることができました。そうやって働いていくうちに、今までの自分の経験が、他の障害のある方の役に立つのではないかと考えるようになりました。

ー製造業からまったく異分野の福祉への転職ですね。迷われませんでしたか?

確かに全く経験のない業界になるので、かなり調べました。働く中での自分の経験を活かしていきたいと思っていたので、就労移行支援で働こうというのは決めて、インターネットで様々な会社や法人を調べましたね。

妻にも、熱意を持って転職したいという話をしていました。

ー実際に、就労移行支援事業所で働き始めてからはいかがですか?イメージとギャップなどはありましたか?

イメージとのギャップというのはなかったですね。というのも、採用面接の段階でかなり詳しく色々と話ができたのがよかったと思います。

面接の中で、事業所のスタッフの方もかなりリアルなところを教えてくださいました。支援は地道な仕事で、泥臭さも必要だったり、結果がすぐに出ないことも多い仕事だけどほんとに大丈夫?と聞かれましたね。

合理的配慮も、就労移行支援の支援員はマルチタスクですごく大変だけどどう?とも確認いただきました。

実際にすごく大変なところもありますが、自分で作成したExcelのTo Doリストを使って工夫したり、コミュニケーションの面でも先輩スタッフに配慮いただいたりしています。

ーご自身でTo Doリストを作られたんですね!どのようなものですか?

Excelで、タスクを細分化して、そのタスク1つで何分かかるか目安の時間が出るようなものです。その日取り組む予定のタスクにチェックをすると、その日の業務にかかる時間の目安が出るようになっています。

時間の見積もりがうまくできず、残業になることがあったのですが、このような工夫で定時で上がれるようになりました。

スケジュールには余白も組み込むようにして、電話対応など突発的なことが入った時にも対応できるようにしています。

もちろん、前職も含めてこれまでの仕事で上手くいかないことも沢山あったのですが、色々なツールを試してみても、自分にピッタリなツールがないな~と思い、作ってみました。

ー支援の仕事を始めて、楽しいなと思うことや、逆に大変だと思うことを教えてください。

楽しいなと思うことは自分自身の障害者雇用で働いてきた経験を、就労移行支援のプログラムとして提供していることです。

言葉で伝えるのはすごく難しくて試行錯誤するのですが、自分の体験を伝えていくことが利用者の方の気づきや変わっていくきっかけづくりになっていると感じることができています。

逆にすごく難しいなあと思うことは、その人の表情や声色だけで判断していると、実際にその利用者の方が考えていることと違う場合があることです。 やはり、なかなか人の考えている意図を汲むということが難しいので、その点は一緒に働く先輩スタッフの方に教えてもらったりしています。

また、自分の力不足でもあると思うのですが、就労移行支援事業所を利用され、就職されても、働き始めてから困りごとが出てきて、離職してしまう方もいらっしゃいます。

そんな時は、自分で何かできたんじゃないかなぁと思います。

ーTYさんご自身が休職されていたとき、会社の人や身近な人にしてほしかったことはありましたか?

そうですね、休職になる前というのは、何かしら体調を崩すキッカケがあると思うんです。

当時悩んでいたことがあり、上司には話を聞いてもらえてはいたのですが、具体的に業務を変える、というようなことは少なく、抱え込んでしまったことがありました。

もちろん自分から伝えていかなければならない部分ではあるので、全て求めるのは違うとは思うのですが、もっと相談ができたらよかったです。

ー診断を受けてから、今までで4,5年ほど経っているとのことですが、今は安定して楽しく仕事をされているのは、以前とどこが違いますか?

一番変わったのは、失敗に対する価値観を変えたことだと思います。以前は、失敗したら怒られる、評価が下がってしまうと考えていました。

今は、失敗しても工夫していけばいいと思っています。今、就労移行支援の業務で、自分の障害を利用者の方へ開示し、これまでの失敗体験を話す機会があるのですが、それがすごく利用者の方にいい反応をもらえるんです。

自分の失敗をきっかけにして、利用者の方の気づきにつながっていることを実感できるので、むしろそれに元気づけられていますね。

ーご自身の経験を支援の中で活かしていくことで、TYさんご自身のエンパワーメントにもなっているんですね。

そうですね。利用者の方への支援を通じていい循環になっていると思います。

ー今、昔の自分に声をかけるとしたらどのような声掛けをされますか?

未来は明るいから前を向こう、ということです。困ったことには、調べたり、学んだりすると良い方向に行くから試行錯誤をしようと伝えたいですね。


ー当事者の支援者として今大切にしていることを教えてください。

はい。支援の中で、自分自身が楽しく働いているのを、いかに「見せるか」をとても意識しています。就労移行支援事業所の中では、支援者は利用者の方にとって一番身近な働いている人です。

その支援者がどんよりしていたら、利用者さんは働きたくないと思いますよね。障害があることで失敗体験をかさね、すがる想いで就労移行支援事業所を頼ってきた方もいます。そんな人にも、マッチングが上手くいけば楽しく働けると伝えたいです。

特に利用者の方は、支援者の言動より表情をよく見ているなと感じます。その中で見せる表情が事業所の雰囲気にも繋がると思います。

ー今後やっていきたいことを教えてください。

今後は、アウトプットをしていきたいと思っています。仕事もそうですし、SNSでつながる方々とも、所属を超えた、同じ目的を共有する1つのネットワークになるといいですよね。

当事者として、働くことの楽しさを伝えていきたいです。

▼これまでの経験から役だった本をご紹介いただきました!

人生に影響を与えた本その①
発達障害の自分の育て方」~岩本友規さん著

発達障害の診断を受けて最初に妻がオススメだと買ってくれた本です。読書をする習慣が全くなかった私でも読みやすく、環境も著者と似ていたことから(発達障害当事者で結婚して子どももいる)興味を持ちながら読むことが出来ました。

「自立の方法」「天職の探し方」をテーマに発達障害の当事者としての体験談と年間数百冊の読書で得た知識を織り交ぜて大人の発達障害を持つ方へ役立つポイントを紹介している内容となっています。

『発達障害で苦しんでいるのは自分だけではないんだ』

『頭を使って色々な知見を増やせば生きづらさは和らげられるのではないか?』という事をこちらの書籍から教わりました。

人生に影響を与えた本その②
マンガでわかる大人のADHD コントロールガイド ~福西勇夫さん著~

成人期ADHDの困りごとを項目ごとにマンガでわかりやすく紹介しています。


多動性・注意欠陥・衝動性の困りごとのケースをマンガで説明し解説がついているのでとても分かりやすいです。こちらも妻の紹介です。

障害についての知識が全くなかった時期にこの本を買ってもらい、発達障害について少しずつ理解をすることが出来ました。

人生に影響を与えた本その③
アドラーの教え 「人生の意味の心理学」を読む ~藤田美菜子さん脚本~

生きづらさを和らげたいと思い、心理学関係の書籍を読み漁っていたころに、「アドラー心理学」に出会いました。「課題の分離」「共同体感覚」など独特な考え方であるアドラー心理学に惹かれてアドラー関係の書籍でもこちらの本はマンガで特にわかりやすくアドラーについて記載がされている本です。

マンガだけではなく、解説もしっかりとついているので何回も読み返すことでアドラー心理学について詳しく知ることが出来ました。