#10 稲岡由梨さん 相談支援専門員/社会福祉士(後編)

地域で18年、障がい福祉を中心に就労支援や相談支援をしてきた稲岡さん。職能団体では研修担当をしたり、区では支援者ネットワークを作ったりと活躍されています。そんな稲岡さんとこれまでのキャリアと今後をお伺いしました。今回は、後編です。(前編はこちら

地域にはサービスに繋がっていない人がたくさんいる

そのお店で、ふらっと障がいのあるご本人、家族が来てさりげなく相談をされる人がいらっしゃったんです。私はそれまで、工賃アップのことでは奮闘していたけど、受給者証すらちゃんと見たことなかった。

基本的なところを意外と知らない、地域にはまだまだ生活の不安がある人がいるんだということを知ったことで興味を持ち、市委託の相談支援事業の事業所に転職しました。

相談支援を始めてからは、こりゃ~修行せないかん、と思いましたね。色んな家族と出会う中で、本当に相談の幅が広いんです。サービス利用の相談もあるし、ひきこもってて、すぐに解決がはかれない相談もある。これというマニュアルがあるわけではないから、ケース次第で対応は変わる。ケースに出会って学んでいかなきゃいけないんだなと思いました。


最初は、家族との相談で涙が出たり、行動障がいがあり引きこもっている方のケース介入するのが怖くて逃げたくなったり、苦情を言われて辛い気持ちになることもありましたが、実践を続ける中で鍛えられたと思います。


問題が起きる前にもっと誰かがかかわって必要な支援に繋がってたらよかった、と思うようなケースも実際多く、サービスに繋がってない人がこんなにいるんだと改めて実感しました。自分の中で解決できない気持ちやケースもありましたが、社会福祉士会の研修運営や、区の支援者ネットワークを立ち上げたことなど、もやもやを聞いてくれる人がいて救われたと思います。


そんな中、福岡市では平成29年に区障がい者基幹相談支援センターが新たに設置されました。福岡市で初の取り組みで、①障がい児者の総合相談(6歳以上)、②地域のネットワークづくり、の2つが大きな役割で私は主任コーディネーターとして勤務しました。

相談に来る方は、疾患や障がいだけでなく、経済的な問題、DV、家族との関係性など様々な複合課題を抱えるケースが多い中、関係機関と連携しながら支援チームを作って支援してきました。

相談当初は何のつながりもなくゼロの状態の方が、例えば相談できる人が増えたり、通所できる居場所ができるなどイチの状態になるような伴走型の支援をめざしてきました。

また、自立支援協議会の運営にも携わり、行政、学校、事業所等と一緒に地域課題への解決に向けての話し合い、横のつながりをつくるためのネットワークの場づくり、民生委員さん向けへの通信の発行や出前講座をすることで、少しでも多くの方に障がい福祉のことを知ってもらえるように発信にも力を入れてきました。

最初は、高齢者や児童分野に比べて民生委員さんとのつながりが薄かったのが、少しずつ「困っている人がいるんだけど…」と相談が来るようになって、草の根的な活動を続けていくことに意味があるなぁと痛感しました。

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※保護者の立場である認定NPO法人「障がい者よりよい暮らしネット」理事長からの取材記事 おたよりVOL 17 障害がある人の地域の暮らしを考える 2022新年号 | 認定NPO法人障がい者より良い暮らしネット (yoriyoikurasi.net)


子どもが生まれて考えた、自分らしい働き方

子どもが生まれてからは時短勤務をしていましたが、できるだけ仕事をしたいと思い時間を伸ばしていきました。2人目ができて、2歳差というのもあって9~16時の時短勤務で復帰しましたが、通勤が車で往復2時間かかり、長くは続けられないと不安がありました。

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自分自身が主体的に働くためにはどうしたらいいのか?と働き方を変えることを考えはじめ、育休中に自分ノートに気持ちを整理したり、noteを書き始めたり、コーチングを受けたり、孤立防止の一環として自殺の電話相談の複業など自宅でできるものを始めたり・・・。

基幹相談の仕事は好きで、ケースワークと地域づくりが両方できる面白さも感じていて迷いましたが、色々な形でソーシャルワークをしている人を知り、自分の暮らしと働くことの両方を無理なく続けられる働き方に変えることにしました。

2022年4月からは「一般社団法人ぱるむ」という法人に所属し、「障がい福祉を軸にしたソーシャルワーカー」として、相談支援専門員(障がい児者)、ケアマネジャー(障がい高齢者)、成年後見人などの立場から関わっていけるように頑張ります。

特に、学齢期→進路、30-40代になっての親亡き後の生活、65歳の介護保険移行期など、年齢を重ねるごとのライフスタイルの変化が出てくるときに様々な生活の課題や不安が出てきます。

実際に縦割り制度で担当が突然変更することで混乱する方にも多く出会ってきました。そのような方が、住み慣れた地域での「自分らしい暮らしの実現」ができるよう、伴走していける人になっていきたいです。

また、「福祉」は身近なものであり、誰もが必要な時にすぐに情報を得て必要な支援を受けられるような社会になっていったらいいなと思います。これからは、そんな社会に近づけていくために、相談支援はずっと続けながら、必要な方への情報発信や地域づくり、人材育成にも取り組んでいきたいです。

稲岡さんの情報発信


ソーシャルワーカーとしての福祉発信、学びの記録のためのnote
ゆっちん🌻福祉をもっと身近に🌈|note